はじめに
日本共産党が、1980年を境に党勢の退潮傾向にあるのは否定し難いことである。本サイトでは、2028年問題として名付けて、革命的な党改革を急ぐべきだと訴えてきた。革命的と呼ぶのは、党の組織原則を民主集中制から民主統一制へと進化させる激動的な、党の体質そのものの質的変化を目指す取組みだからだ。
革命的な党改革を成功裏に進める為には、既存の秩序や約束事を無視しようとする内なる声と闘う必要がある。なぜなら、「革命的な時期が進化的な時期によって準備されることなしには到来しえないことを見ない者は、冒険主義者」だからである。「『量から質への転化の法則』は、冒険主義が誤りであることを示している。(「弁証法的論理学試論」寺沢恒信)
日刊紙赤旗と2028年問題
Excelで、1977年から2020年にかけての党員数と機関紙読者数の推移をグラフにして近似曲線(指数近似)を求めると、機関紙読者数は、2028年末までには75万部を割り込む。推定発行部数16万部の日刊紙赤旗は、発行部数が12万部まで落ち込んで採算ライン(推定約18万部)を6万部も下回る見込みだ。毎年、数億円を大きく上回る赤字が予想される。正に、日刊紙は、存続の危機を迎える。
インターネット上には、反動勢力が流す情報と悪意に満ちたファクト情報が溢れている。そのなかにあって、赤旗記者たちによる《足を使った事実に基づく価値ある記事》を毎日読むことができる日刊紙の存在は貴重だ。「善い記者が良い紙面をつくり、信用される記者が信用される紙面をつくる」を実践するならば、その存続の可能性は皆無ではない。日本共産党には、「インターネットやスマホの普及で、新聞が読まれなくなったからだ」(桃野泰徳)を言い訳にしないで、読まれる紙面作りを第一義にして、Excelの近似曲線を否定して欲しい。
冒険主義の二つの誤り
(戦術としての)冒険主義の特徴の一つは、既存の秩序に対する反乱を通じて激動的な時期を早めようとすることにある。二つは、既存の約束事を破ることで反乱を暴動へと導くことにある。
このように、2028年問題を直視したがゆえに激動的な時期を早めようとする冒険主義は、その意に反して敵を利する結果で終わる。急がば回れは、革命的な党改革にも言えることだ。
もちろん、冒険主義を事情の如何を問わずに否定することは誤りである。「我、捨て石となっても改革を早めん!」との決起もあり得る。鈴木元氏の行動には、この英雄的な側面があることを忘れてはならない。我々は、氏の冒険を失敗に終わらせてはならない。
回りながら急ぐ二つの宣伝作戦
さて、何事も批判するだけが能ではない。大事なのは、建設的な提案や解決策を示し、党の旧態依然とした組織体質を変える激動期を引き寄せることだ。本稿では、二つの宣伝作戦を提示する。
- 組織原則の民主統一制への進化の意義を宣伝する。
- ポスト資本主義行動委員会結成の意義を宣伝する。
日本共産党は、「ルールなき資本主義」から「ルールある資本主義」への移行後の展望を明確に示すことで、トップダウン型の社会主義建設に対する警戒感は払拭される。「ルールある資本主義」へと前進した時代が、社会主義建設が始まる時代であるとする現綱領の誤りは、訂正される。ルールある資本主義の時代は、《市場経済下でのポスト資本主義を目指す漸次的進化の時代だ》ということが明瞭に示される。
二つの宣伝作戦は、日本共産党が、ポスト資本主義行動委員会の結成に尽力し、ポスト資本主義運動の共同センターとなることで、新しい時代の風を帆にはらんで、再び躍進する時代を拓く宣伝戦そのものである。
宣伝戦の結果、党改革を求める党員が増えていけば、そこに革命的エネルギーが蓄積されてゆく。いつかは、集権集中制でしかない民主集中制に固執する勢力と民主統一制への進化を願う勢力との均衡が破れる時がくる。均衡が破れることによって、革命状態がはじまる。結果、日本共産党は、古い秩序を自己破壊して新しい秩序を獲得する。急がば回れである。
結び
鈴木元氏の行動を冒険主義と呼ぶのは、立命館大学時代に、氏が厳しく性急な冒険主義を批判していたからである。「革命的な時期を準備する進化の時代を不屈に闘うことこそが真の戦闘性である。我々の闘いは、勝利に至る過程においては必ず敗北という結果に終わる。だから、進化の時代は、実のところ妥協の連続である。それでも、いつかは均衡が破れる。その日を目指して闘うのみである」ー鈴木氏から、そのように教わった。鈴木氏に、党首辞任と党首公選のニ要求を取り下げてでも妥協するように進言した所以である。
一番大事なことは、鈴木氏の決起を、単なる冒険主義に終わらせないことである。大事なことは、除名という結果を変えることである。その為には、党内に革命的なエネルギーを蓄積していく闘いを継続することに尽きる。
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