人にはマイホームを
――特殊住宅金融公庫構想――
日本照生党 樋口一郎
はじめに
1991年のバブル崩壊は、日本社会の“二つの柱”を静かに、しかし確実に折った。 一つは、明治以来の日本を支えてきた 縦へ縦へと積み重ねる技術文化 の終焉である。 もう一つは、衣・食・住の現場を支えてきた 低賃金労働という見えない循環装置 の停止である。
特に縫製産業の崩壊は象徴的だった。 2015年、ワールドがシャツ製造子会社リドー(金沢市)を清算し、2020年にはレナウンの子会社ダーバン宮崎ソーイングが閉鎖された。かつて日本の都市部と地方をつないでいた“縫う仕事”は、静かに、そして急速に姿を消していった。
その後、海外生産と国内生産のコスト差が縮まり、国内の異分野連携によって高付加価値商品が生まれつつある。しかし、1996年以降に縫製産業を去った労働者とその子どもたちの多くは、非正規雇用の主たる層として取り残されたままである。
縫製産業の“再生の物語”は語られ始めたが、彼らの物語は、まだどこにも書かれていない。そして彼らが属する層は、今の日本社会の“最も重い現実”を背負っている。
- 実質賃金が下がり続けている層
- 子育て・教育費で苦しむ層
- 非正規雇用・低所得の若年層
- 住宅価格高騰で家が買えない層
- 社会保障負担が重い現役世代
この層に共通するのは、「生活の拠点=マイホーム」を持つことが、もはや“夢”ではなく“遠い幻”になりつつある という事実である。だからこそ、私はここに新しい提案を掲げたい。
>人にはマイホームを!
彼らが、生活の拠点を取り戻すための《特殊住宅金融公庫構想》である。
1、現状を改革する3つの柱
我々は、「人にはマイホームを!」のスローガンを掲げる時、次の3つの柱を忘れてはいけない。
第一の柱:先ずは現状をリアルに分析する。
第二の柱:教科書的でない創造性を持つ取り組みを行う。
第三の柱:スローガンを達成するために一歩も引かない構え。
1-1、深刻化する空き家問題と少子高齢化
- 空き家は全国で約900万戸
- 2030年代には1,000万戸を超える
- 地方は空洞化
- 若者は都市で家賃に苦しむ
- 高齢者は住み替えられない
これが、日本のリアルな現実である。そして、少子高齢化は、若者が働いて家族を作る基盤=マイホームを持てないという現実の反映でもある。
- 新築は高すぎる
- 土地も高すぎる
- 若者は高いローンを組めない
我々は、この若者に前に立ちはだかっている3つの高いハードルを低くしなければならない。そうして、彼らに低くなったハードルを跳び越えさせなければならない。仮に、これに成功するならば、少子化をストップするその後の取り組みは比較的に容易に進むだろう。
1-2、空き家再生技術の進化
- スケルトン化
- 断熱フルリノベ
- 耐震補強
- 配管・配線の総入れ替え
- 断熱等級5〜6への改修
- 省エネ化
- 既存不適格の再生技術
これらが揃った今、全国で約900万戸に上る空き家は“廃墟”ではなく“資産の原石”になっている。今や、空き家は、持ち家の最短ルートになった。問題は、若者の“持ち家の夢”の実現を国家プロジェクトに変えるための教科書的ではない創造性あふれる制度設計にある。
我々は、この制度設計を阻む旧態依然とした諸制度の前に怯んではいけない。我々は「一歩も引かない構え」で旧制度に立ち向かわなければならない。
2、特殊住宅金融公庫構想
(1)空き家の選択
→ 公庫が全国の空き家を調査し、候補物件を提示
→ 利用者は“選ぶだけ”
(2)新築化リノベ計画の作成
→ 公庫が専門家チームで無償作成
→ 耐震・断熱・配管・配線まで“新築同等”に再生
(3)リノベ資金の貸し付けと回収
→ 公庫が低利・長期で貸し付け
→ 返済不能時は公庫が回収・再利用
→ 民間金融機関を通さないので非正規でも借りられる
(4)土地と空き家は公庫が無償提供
→ 利用者は“リノベ費用だけ”で持ち家を得る
→ 実質的に「土地+建物の取得コスト=ゼロ」
むすび
若者が家を持てる、家族が増える、地域が再生する、労働者層が安定する、税収が増える、社会保障負担が軽くなる。つまり、住まいの安定は国家の安定そのものである。
アメリカのニューディール政策では、住宅公庫・公共事業・住宅ローン制度・住宅建設支援。これらがセットで行われた。我々が掲げる特殊住宅金融公庫構想は、“日本版ニューディール”に他ならない。
犬には犬小屋を、若者にはマイホームを。
