- 革命なき社会主義への道
- 生産手段掌握論の再検討
- 24世紀を見据えた綱領
革命なき社会主義への道
2023年に採択された日本共産党の綱領は、不破哲三氏や志位和夫氏らが中心となって日本における社会主義への道を探求してきた画期的な到達点を示しています。しかし、それはなお、生産の社会化が主たるテーマになる段階に関する幾つかの認識で不明瞭な点があります。別の言い方をすれば、2023年綱領は、なお旧い社会主義革命論の影響下にあります。今大会の任務は、この問題点を正し、24世紀を見据えた新しい綱領路線を採択することです。
2023年綱領の到達点
まず、2023年綱領の到達点を確認しておきます。それは、当面する民主主義革命を、次のように定めています。
現在、日本社会が必要としている変革は、社会主義革命ではなく、異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破――日本の真の独立の確保と政治・経済・社会の民主主義的な改革の実現を内容とする民主主義革命である。
また、当時の綱領は、民主主義革命が達成された次の段階について、次のように規定しています。
日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる。
続いて、社会主義をめざす権力について、次のように述べています。
その出発点となるのは、社会主義・共産主義への前進を支持する国民多数の合意の形成であり、国会の安定した過半数を基礎として、社会主義をめざす権力がつくられることである。
2023年綱領に至るまでの綱領路線の変遷は、ウイキペディアが簡潔にまとめています。
戦後の日本共産党は、日本の現状を、アメリカ帝国主義と日本独占資本に支配されていると規定し、この両者の支配を打ち破る人民の民主主義革命をおこない、それから連続的に社会主義革命へと至るという二段階革命論をとった。しかし日本共産党は、徐々に「人民の民主主義革命」と「社会主義革命」の連続性を強調しなくなり、ついには「民主主義革命」と「社会主義革命」は完全に分離された。(ウイキペディア)
2023年綱領が画期的であるのは、「『民主主義革命』と『社会主義革命』を分離した」ことです。
2023年綱領の問題点
さて、今大会決定の草案で「なお、2023年綱領は、旧い社会主義革命論の影響下にある」として問題にした一つは、「民主主義革命が達成された次の段階では、果たして、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が課題となるのか?」という点です。言い換えれば、我々は、「いくつかの移行の段階をとおって、社会主義的な変革が課題になるのではないのか?」という漠とした考えを持っていました。この疑問に対する明瞭な答えを見つけるのが、私らに課せられた宿題でした。
ある党員から、この疑問を解く有力なヒントが寄せられていたので紹介します。
民主主義革命が達成された後の我々の次なる任務は、市場経済を維持しつつ、資本主義的な古い質を減らし、共同社会的な新しい質を増やしていく漸次的進化を牽引することだ。このポスト資本主義革命とも言うべき漸次的進化は、必ずや、社会全体の相転移をもたらす。この社会全体を一歩高い次元に移行させる飛躍によってこそ、社会主義的変革が主要課題となる次なるステージ(ポスト資本主義の時代)が出現する。
ポスト資本主義の時代では、何年かの時間を要する過程をとおり、一歩一歩と社会主義の時代に接近していく。我々が目指す社会主義革命は、幾つかの段階をとおって行われるもので、ロシア革命のように「決定的打撃の単一の行為」によって行われるものではない。そのことを知る我々は、断固として、いわゆる社会主義革命という形態による変革そのものを拒否する。
(飛躍の二つの形態 「弁証法的論理学試論」参照 寺沢恒信著)
幹部会は、「民主主義革命と社会主義変革との間に連続性はなく、独立・民主・平和の日本を実現する民主主義革命が達成された後も、引き続き資本主義の枠内での改革がテーマとなる。このポスト資本主義革命では、資本主義的な古い質を減らし、共同社会的な新しい質を増やしていく改革が追及される。この漸次的進化は、やがて社会全体の相転移をもたらす。こうして、社会は、ポスト資本主義の段階を迎える。このポスト資本主義社会において初めて社会主義的な変革がテーマになる」とする提言が、まったく正しいということで意見が一致しました。
また、幹部会は、「我々が目指す社会主義革命は、幾つかの段階をとおって行われる」と、我々が目指すべき革命の形態が「飛躍が、単一の行為で行われる第一の形態ではなく、一定の過程を経て行われる第二の形態である」ことを明確にしたことは、画期的な前進であることを確認しました。
むすび
「革命なき社会主義への道」のタイトルを付した章では、主に二つのアプローチによって日本共産党が目指すべき社会主義革命に言及している。一つは、量的変化と質的変化を区別していることである。市場経済を維持しつつ、資本主義的な古い質を減らし、共同社会的な新しい質を増やしていく取組みは、「量的変化であるゆえに漸次的で、比較的ゆっくりおこる」ので、ポスト資本主義を目指す漸次的進化の過程と規定。一方、(量的変化の蓄積の結果としての)「質的変化は、飛躍であるから、比較的に急激におこる」ので《社会全体の相転移》と表現し、結果として出現する一歩次元の高い社会を《ポスト資本主義社会》と定義した。
二つは、「質的な変化が飛躍であり、飛躍は急激におこなわれる、ということを、あまりにも狭く解釈し過ぎる」誤りに対して、飛躍には二つの形態があるという観点からの批判である。その目的は、高度に発達した資本主義国にあって、決定的な打撃としての社会主義革命を目指す極左的な誤りを退け、ポスト資本主義の時代にあっても、社会主義的な変革という量的変化を蓄積し「一歩一歩と社会主義の時代に接近していく」ことが真の社会主義革命であることを明らかすることである。何十年という年月を要しようとも、人類史という視点から見れば、これもまた極めて短期間に達成される革命である。
このことをもって、私は、2023年綱領を確かなフローチャートとして完成させる方向性を示したつもりである。それは、旧い生産手段の社会化論を乗り越えることで完成する。もちろん、僅か数日の思索の結果でしかない論は、更に厳しい検討が求められるのは当然のことである。仮に、そのような討論を呼び起こせば、願ったり叶ったりである。
0 件のコメント:
コメントを投稿