はじめに
- 党に対する攻撃を、党の外から行なった。
- 党攻撃のための分派活動の一翼を担った。
- 党に多様な政治グループの容認を求めた。(鈴木元氏除名理由)
民主統一制を新たな組織原則とする新生日本共産党が誕生した場合、私利私欲の実現を目的とした派閥の結成と派閥の目的を達成するための諸活動が無条件に是認される訳ではない。本稿は、民主統一制と派閥の関係を探求する一つの試論である。同時に、本稿では、鈴木元氏除名の3つ目の理由も含めて全面的な反論を試みる。勝手ながら、ややこしい話は苦手なので、未来の日本共産党党首である宮本哲三氏のXX回党大会での報告を引用することで本文とする。
規約第3条に関する報告(宮本哲三)
はじめに
本大会は、我が党が民主集中制を発展的に継承した民主統一制を初めて党規約に明記する点で非常に画期的なものです。規約の新しい条文をご紹介する前に、もう一度、民主統一制の概念を確認しておきます。
党員は、大会決定を討議する時も、決定の実行方針を決める時にも、自由に発言することができる。しかし、決定の実行方針を実践する特定の政治行動プロセスでは、すべての党員は、自説への拘りを捨てて行動の統一の旗の下にみんなで決めた方針の実現に最大限尽力しなければならない。また、実践に関する総括及び実行方針の見直しを行う時は、党員には、再び自由に発言することで、更なる方針の発展に寄与することが期待される。発言の自由とは、政策討論集会やSNS及び出版などによって意見を公開する自由を含む。
2020年代の初めは、党勢の衰退が激しく、我が党はかなり深刻な苦境に立たされていました。これに危機感を抱いた一党員が当時の党首宛てに党改革を訴える手紙を出した訳ですが、これは残念ながら無視されました。その後、その党員は、その手紙を公にして、「党に対する攻撃を、党の外から行なった」という理由で除名されるに至ります。
当時、我が党の規約は、発言の自由を不正確に余りにも狭く規定し、行動の統一を不正確に余りにも広く規定していました。集権集中制とも呼ぶべき誤りが、我が党を支配していました。それが、除名をもって一党員の発言を封じるという悲劇的な事態を招いた訳です。先に紹介した民主統一制は、その深い反省から生まれたものです。
民主統一制と7つの基準
今、我が党は、ポスト資本主義の新しい社会を目指す国民各階層のセンター、国民各階層の願いをかなえる取組みの中心という立ち位置を得て、新たな発展軌道に乗っています。そのなかで、我が党の責任は、ますます重いものとなっています。その責任を果たすためには、次に示す民主統一制の諸基準をしっかりと理解して血や肉にしていく必要があります。
民主統一制は、次の7つの基準で説明されます。
- 党の大会決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める。
- 大会決定を実践する方針も、民主的な議論をつくし多数決で決める。
- 全党は、方針等を実現する特定の政治行動では行動を統一する。
- すべての指導機関は、投票による民主的な選挙によって選出される。
- 党員には、党の諸問題を討論する集団をつくり、参加する自由がある。
- 党内に、私利私欲の実現を目的とした派閥はつくらない。
- 意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない。
第1項から第3項は、民主統一制の肝
今までの規約では、1項から3項で示した基準を次のように定めていました。
- 党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める。
- 決定されたことは、みんなでその実行にあたる。行動の統一は、国民にたいする公党としての責任である
従来の基準は、行動の統一を不正確に規定しており、そこに行動の統一を広く解釈する余地がありました。新しい規約では、全党の行動の統一は、大会決定の実行方針である各種プランを実践する特定の政治行動においてのみ求められることを誤解の余地なく明らかにしています。このことは、大会決定を討議する時も、決定を実践する方針を討議する時も、また、方針の実践を総括し、実行方針の見直しを討議する時も、その全てにおいて党員が自由に発言できることを明示したもので、民主統一制の肝というべき条項です。
投票による選挙の実施を明記した第4項の意義
3. すべての指導機関は、選挙によってつくられる。
従来の規約では、「すべての指導機関は、選挙によってつくられる」と規定していました。我が党では、単一の候補者を信任するか信任しないかの選択肢しか与えられていない信任投票が一般的だったことに対する反省を込めて、規約の文言を次のように改めました。
4.すべての指導機関は、投票による民主的な選挙によって選出される。
もちろん、実際に複数の候補者が立候補する選挙が実施されるかどうかは、その時々の情勢が決めます。ですから、新しい条項が、信任投票という形式での選挙を一律に否定している訳ではありません。大事なことは、我が党が、複数の候補者が立候補する党首選挙を視野に入れる新しい段階を迎えているということです。この新しい段階は、我が党に幾つかの改革課題を達成することを要求しています。
改革課題のテーマを一言で言えば「代議員制におけるプロ化の弊害を克服する」ということです。この件については、既に、党中央に様々な提言が寄せられています。そのなかには、党大会の代議員に選出される「専従」比率の適正化を求める声もあります。これらの党員諸氏の提言をどういう風に実現していくのか?プロ化の弊害克服プログラムづくりは、正に、今始まったばかりです。新規約第3条第4項の文言は、こういう党の新しいステージを目指す取り組みを反映したものです。
討論を目的とした集団及び党員の参加を許可する第5項
新しい規約の革新性は、党規約第3条第5項で、討論を目的とした集団及び集団への党員の参加を許可したことです。この条項を追加することについては、「派閥・分派への発展が不可避な集団の許可は、党の統一と団結を破壊しかねない」という根強い反対がありました。
この派閥・分派不可避論は、「党員は、常に資本主義主義的な欲望の誘いに晒されている。私利私欲に走る党員の発生は避けられない。こういう現実を直視すれば、党員による集団の形成は許されない。例え、単なるディスカッショングループであっても、許可すべきではない」という党員に対する不信を背景にしたものです。この党員に対する不信感と集権集中主義が結びつくことで、我が党は、事実上、長らく全てのファンクションを禁止してきました。
しかし、党員に対する不信に根差した派閥・分派不可避論は、自覚的な共産主義者が自主的に結びついた日本共産党としては、きっぱりと否定すべきです。私は、ここに「党員には、党の諸問題を討論する集団をつくり、参加する自由がある」ことを宣言するものです。
党規約第3条第5項は、党綱領の批判的検討が、党指導部の専権事項ではないことを全党に示しています。私は、党員諸氏が様々な討議・討論グループを結成し、大いに議論を尽くすことを期待しています。そのことが、我が党の綱領が、全党の英知を結集して更に変化・発展していく原動力になると信じています。
私利私欲の実現を目的とした派閥の禁止について
党規約第3条第6項では、従来の「派閥・分派はつくらない」を「私利私欲の実現を目的とした派閥はつくらない」に改めています。これは、2020年代初頭に起きた除名事件の反省から、党内ファンクションを派閥として断罪する要件をより具体的に定めたものです。また、「派閥・分派はつくらない」を「派閥はつくらない」と「分派」という表現を省いたのは、規約の文言を現代化する試みの一つです。
そもそも、派閥とは、3人以上の集団が次のような活動を展開することを想定しています。2名までの反党的な行動は、単に反党活動と呼ぶのが相応しいというのが我が党の見解です。
- 私利私欲の実現を目指す基本方針を定める。
- 基本方針を実行に移すプランを決める。
- プランを実際に実行する。
- プランの実行を総括する。
- 総括を反映して次のプランを練り上げる。
派閥活動をこのようにばらして評価するのは、ファンクションが反党的な派閥であるのか否かを客観的に判定する上では欠かせないことです。第1と第2の段階に留まっていれば、反党的なことを企てたに過ぎません。当然に、除名処分の対象にはなりません。問題は、プランを実際に実行した場合です。第3~第5の段階まで進めば、除名処分を検討する対象になります。更に、一回目の実行の反省に基づいて練り上げた新プランを実行に移せば、除名処分の検討は必至です。
党は、ファンクションの基本方針、実行プラン、その実践プロセスのそれぞれをばらして検討します。そして、どれが反党的な要素であって、どれが反党的でない要素かを一つひとつ吟味して結論を出します。
「私利私欲の実現を目的とした」という文言は、このような我が党の派閥活動に向き合う基本姿勢を示しています。決して、党内ファンクションを恣意的に派閥と判断して乱暴に排除することはしません。そのことは、第3条第7項で、「意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない」と念を押している通りです。
最後に
最後に、本大会では《2020年初頭の誤りで除名された党員の名誉を回復する決議》が提案されることをお知らせしておきます。
結び
本稿は、正に、私の希望的な妄想の産物でしかない。しかし、本稿を妄想の産物として一蹴することは、日本共産党をして鈴木元氏除名問題の名誉ある解決から遠ざけることを強く指摘しておく。
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